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事件を風化させず、言論の自由を守る〜朝日新聞阪神支局襲撃から30年〜

2017年5月3日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 小林基秀


 1987年5月3日、朝日新聞阪神支局が襲撃され小尻知博記者が凶弾に倒れました。言論の自由を暴力で踏みにじるという衝撃的な事件から30年。私たちの社会はいま、民主主義の根幹である言論の自由が守られていると言えるでしょうか。

 赤報隊を名乗る者の犯行声明によると、目的は「反日分子を処刑」とあります。朝日新聞を「反日」として否定し、その論調を理由に犯行に及んだのであれば、言論の自由、民主主義社会への挑戦にほかなりません。自分たちの考えに合わないものは、暴力を使って封殺するという恐ろしい考え方です。

 安保関連法をめぐる議論に代表されるように、国民世論は分断されています。一人ひとりの意見が異なるのは当たり前です。その溝を少しでも埋めるために根気強く議論をし、一致点を見出すのが民主主義です。ここ数年で社会問題化したヘイトスピーチに代表されるように、意見の異なる人を汚い言葉で蔑み、切り捨てる。そんな傾向が以前よりも強くなっていないでしょうか。やがて正常な感覚が麻痺し、30年前の悲劇が繰り返されてしまうのではないかという懸念を抱かざるをえません。

 民主主義の本場を自任する米国のトランプ大統領は、自身に批判的なメディアを「うそつき」と罵りました。政治的公平性を理由に現職の総務大臣が「電波停止」の可能性に言及したり、政権与党が考えを異にする沖縄の地元2紙に対して圧力をかけたりするなど、民主主義を最も守らなければならない政治家の資質を疑わざるをえないような出来事が起きています。

 昨年来日した国連の特別報告者は、日本のメディアの状況について「報道の独立性は重大な脅威に直面している」と警鐘を鳴らしました。インターネット空間では、自分の意見に合わない新聞に対し「反日」「売国奴」といった言葉が浴びせられています。このような状況にメディアが萎縮しているのではないかと、懸念する声があがっています。メディアが萎縮すればするほど、報道に対する信頼は揺るぎ、ジャーナリズムに対する不信は広がってしまいます。

 いま私たち新聞人にできることは何でしょうか。それはこれからも堂々と報道機関として意見を言い続けることです。小尻記者の犠牲を決して風化させてはなりません。どのような状況でも萎縮することなく、ジャーナリズムとしての使命を果たし続ける。朝日新聞阪神支局襲撃事件から30年というこの日に、民主主義の根幹である言論の自由を守るという決意を新たにしたいと思います。
以上