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表現の自由を侵すビラ配布最高裁判決に抗議する
2009年11月30日
日本新聞労働組合連合
中央執行委員長 豊秀一
 政党のビラを配るために東京都葛飾区のマンションに立ち入ったことで住居侵入罪に問われ、一審で無罪とされながら二審で罰金5万円の逆転有罪判決を受けた住職の荒川庸生さん(62)の上告審で、最高裁第二小法廷(今井功裁判長)は11月30日、二審に続いて有罪の判決を言い渡した。ビラを配布しようとしただけで逮捕・有罪になるという強引な摘発が続けば、市民が自分の意見を言ったり、集会を開いたりすることすらためらいかねない萎縮効果が生まれるのは間違いない。荒川さんの逮捕・起訴は自由で民主的な社会を窒息させてしまう公権力による市民的自由の侵害にほかならず、それを有罪とした「憲法の番人」たる最高裁の人権感覚を疑わざるを得ない。強く抗議する。

 一審・東京地裁は、荒川さんがマンションに立ち入った時間が短時間だったことやピザのチラシなども投かんされながら逮捕・起訴されていないこと、荒川さんが40年以上政党ビラを投かんしてきながら立ち入りをとがめられたことはないなどの事情を考慮し、荒川さんの立ち入りには正当な理由があるから無罪という判断を示していた。これが常識的な結論というものではないか。インターネットが発達した時代とはいえ、ビラ配りもまた市民が自分の意見を社会に伝える重要な手段であり、表現行為として守られなければならない。住民の日常生活の平穏を求める気持ちを汲んだとしても、ビラ配布のために節度を持って集合住宅に立ち入ることがなぜ刑事罰にあたるのか、およそ理解できない。

 自衛隊のイラク派遣をめぐり、立川市の防衛庁官舎で反戦ビラを配布した市民団体の3人が逮捕・起訴されたケースでも、同じ最高裁第二法廷(今井功裁判長)が2008年4月に有罪を言い渡している。防衛庁官舎の郵便受けにも様々なチラシが入れられている中であえてこの3人が刑事責任を追及されたのは、自衛隊派遣に反対する内容のビラを配布したからに違いない。事実上の表現内容そのものへの公権力の介入である。こうした市民の表現の自由の侵害を許すことは、私たち新聞をはじめ報道機関やフリージャーナリストの取材活動もまた「住居侵入」を理由に容易に制約されることにつながっていくだろう。多様な価値観が共存し、少数の声に耳を傾ける自由で寛容な社会を築くためにも、公権力による市民の表現の自由の侵害を認めるわけにはいかない。
以 上