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知る権利を踏みにじる自衛官処分に抗議する
2008年10月3日
日本新聞労働組合連合(新聞労連)
中央執行委員長  豊 秀一
 中国海軍潜水艦が火災とみられる事故を起こして航行不能になったと報じた2005年5月31日付の読売新聞朝刊の記事をめぐり、防衛省は2日、防衛秘密を漏らした疑いがあるとして、自衛隊法違反容疑で書類送検された同省情報本部電波部の元課長の1等空佐(50)を懲戒免職処分にした。報道機関への情報提供を理由に自衛官が初めて免職されるという前代未聞の事態だ。国民の知る権利を制約しかねず、全国の主要な新聞・通信社でつくる産業別労働組合として強く抗議する。
 権力機関が情報を隠そうとするのはいつの時代も変わらず、その秘密の壁を破り、正しい情報を国民に伝えるところに報道機関の使命がある。しかし、処分は取材される側の公務員に萎縮効果を与え、権力に肉薄して取材活動することを困難にする。本来開示されるべき情報が届かなければ、犠牲になるのは国民の知る権利だ。多様な情報が流通して成り立つ民主主義社会の土台を崩しかねない行為に踏み切った防衛省には、猛省を求めたい。
 そもそも、中国海軍の事故に関する読売新聞の記事の内容は、漁船の航行の安全などを考えても積極的に報ずべき内容であり、公共性が高いものだ。記者会見で防衛省側は、どこが防衛秘密にあたるのかと問われても、「差し控えたい」を繰り返すばかりで、処分の詳しい理由は一切説明しなかった。報道によれば、「情報保全を強く求める米国に配慮した」ことが処分の背景にあるという。防衛次官は会見で「報道の自由や国民の知る権利の重要性は認識している」と語っているが、現実には米国の顔色を伺い、あいまいな「防衛秘密」を振りかざして、行き過ぎた情報統制をしたというほかない。報道の自由や知る権利がなぜ憲法で保障されているのか、という点について理解があるとは思われない。
 危惧するのは、処分の影響が防衛省内部の問題にとどまらず、公務員全体に広がることだ。奈良県で起きた放火殺人事件に関する著書で少年の供述調書が多数引用され、調書の内容を筆者に教えたとして鑑定医が刑事訴追されている。直接の取材者ではなく、取材される側に見せしめ的に圧力を加えるという点で、自衛官の処分と鑑定医の訴追には共通する点がある。処分された1等空佐は3月、自衛隊法違反(秘密漏洩)容疑で東京地検に書類送検されている。仮に刑事訴追されるようであれば、「官」の持つ情報が「守秘義務」を理由に安易に開示されなくなり、悪影響ははかり知れない。捜査当局には慎重姿勢を求めたい。
 ジャーナリズムの根幹は権力の監視だ。権力と対峙し、相手が隠そうとする情報を暴き、正確に国民に伝えることにほかならない。ジャーナリズムが権力に屈し、真実を伝えなくなると、社会はどうなるのか。国民もろとも坂道を転がり落ちていったこの国の過去を振り返れば、おのずと明らかだろう。真実を報道して広く国民の知る権利にこたえるためにも、防衛省による安易な情報統制を認めることは到底できない。
以 上